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第35回海洋工学パネル・プログラム
テーマ: 大陸棚画定後のわが国の海洋管理と開発・利用
日 時: 2007年1月19日(金) 9:30〜18:00
会 場: 日本大学 理工学部 駿河台校舎 1号館 2階大会議室 |
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「コンセプト」
来る2009年にはわが国を始め、沿岸諸国の大陸棚画定の期限が来る。そのあと、国連海洋法条約のレジームのもと、世界各国の大陸棚などの海洋境界線が明確化され、沿岸各国は海洋に対する権利と義務を負う、新しい海洋の時代に入る。
ところで、私たちは、日常、日本が四方を海に囲まれた海洋性列島である事を殆ど意識していない。台風が列島を襲う場合などでは、列島全体が広大な海に浮かぶ島国である事を僅かに意識の片端に乗せるだけである。申すまでもなく日本を囲む海洋はわが国の歴史始まって以来,我々に悩みと同時に恩恵を与えてきた。世紀の自然科学思想家と慕われるR・カーソン氏が問い掛け続けた魅惑・恵に満ちた海は今日でも地球の持続的環境保全の主役である。その意味で海洋は人類の共有財産である。
一方、人類の人口増加と社会経済の発展に伴うナショナリズムの高揚は、海洋が誰に帰属し、誰によって管理されるべきかの問いを半世紀以前から発生させた。言うまでも無く海洋の広がりは有限の空間に限定され、海洋管理の主導権が誰に帰属するべきかは、国際的競合問題である。この事態に主導的指針を提起したのが「国連海洋法条約」(1992年制定、2004年発効)である。この立場で見直すと、日本固有の海域は広大で世界の大国と肩を並べる位置にある。取りも直さず,これこそわが国が世界の海洋利用・管理について世界の指導的立場に立つ必要性の背景である。しかも,わが国は科学技術立国に半ば成功の道を歩みつつあり、技術と資力に勝る様になった我が国の「海洋政策」の動向は,周辺諸国への潜在的影響力が大きく、日本周辺諸国が日本の「海洋政策とビジョン」に高い関心を割くことは至極当然であろう。海運、水産、地下資源、エネルギー問題はもとより、海水そのものすら限られた水資源として考える時代が来つつある。
このような状況を踏まえ、遅まきながらわが国の政治においても「国家海洋政策の基本」を固める動きが盛んである。私たちもここでもう一度「海洋」の根源的問題に立ち返り,我々の知識と立場を新たに整理する事を目的としてこのパネルの内容を設定した。
【プログラム案】
午前の部 司会 日本海洋工学会運営委員 木下 肇(海洋調査技術学会)
9:30〜9:35 開会挨拶 日本海洋工学会会長 遠藤 茂勝(土木学会)
(1)9:35〜10:20
国連海洋法条約体制と海洋の開発・管理
栗林 忠男 東洋英和女学院大学教授,慶応義塾大学名誉教授
「海洋法に関する国際連合条約(国連海洋法条約)」(1982年採択、1994年発効)を中心として始動した新しい国際海洋法秩序の体制においては、「海洋の自由」から「海洋の管理」への発想が含まれている。他方、幾つかの重要な国際海洋法の原則・規則の解釈・適用をめぐって国家間の紛議や紛争を招いており、また、予期しなかった新しい法的問題も発生している。海の国際法をめぐるかかる変動状況において、海洋立国としてのわが国においては、国際協調に基づく、海洋の持続可能な開発利用を旨とする、総合的な計画・管理のための海洋政策の策定・実施が強く望まれる。
(2)10:20〜11:05
沿岸域管理の課題と海洋基本法案
来生 新 横浜国立大学教授・副学長
わが国の沿岸域管理に関する法制度の現状を紹介し、その問題点を整理する。それを踏まえて、現在自由民主党を中心に立法作業が進行中の海洋基本法案の概要を紹介し、事務局原案作成のたたき台をつくった者として、最終的にまとまった法案が沿岸域管理の課題にどのように対応しようとしているのかを検討し、基本法体制の下で今後わが国の沿岸域管理制度がどのように整備されるべきかを考える。
(3)11:05〜11:50
国際テロ脅威に対する水中監視技術開発成果の現状
浅田 昭 東京大学生産技術研究所教授
国際テロ脅威の高まる現在、沿岸域に隣接する大量のエネルギー物質、危険物質を管理・運用する施設事業体、国、地方自治体は、地域周辺の住民に対し、見えない水中からのテロの脅威に対しても厳重な警備を行ない、安全を確保する義務がある。また、2008年の開催国であるサミット警備には、世界最高レベルの警備技術が要求される。今まで監視することの出来なかった水中を、音波を使って見えるようにする技術開発が求められ、平成17年度から3ヵ年計画で科学技術振興調整費 重要課題解決型研究等の推進「水中セキュリティソーナーシステムの開発」を実施し、施設周辺、港湾周辺を効果的に実用監視警備が出来るまでに技術開発成果を上げてきた。
11:50〜12:20 午前の部 討論−1
12:20〜13:20 昼食
午後の部−1 司会 日本海洋工学会運営委員 多部田 茂(沿岸域学会)
13:20〜13:45 海洋工学関連会議報告
4)13:45〜14:30
我が国の海とこれからの水産
松里 寿彦 独立行政法人水産総合研究センター理事
我が国のEEZ内の海は、昔から世界の四大漁場の一つに数えられる世界有数の好漁場であり、日本人は古来よりこの海の恵みを積極的に利用してきている。恵まれている者は自ら持っている豊かさに気づかないだけである。このことは、百年単位では将来とも変わらないことであろう。
わずか数十年前までは、我が国の輸出を支えてきた水産の歴史を振り返るとともに、我が国周辺海域の豊かさを支える生産性の高さに関連した最近の研究成果を紹介する。
最後に我が国の水産の将来展望について述べる。
(5)14:30〜15:15
船舶・海洋構造物の新たな挑戦−海洋利用技術のありかた
鈴木 英之 東京大学 教授
わが国の領海と排他的経済水域を合わせた面積は約447万km2で、国土面積約38万km2の12倍近い、世界第6位の面積となっている。この海域は、人間活動の場となる空間をはじめとして、自然エネルギー、鉱物資源、生物資源などの宝庫でもある。今後わが国が持続的社会を構築してゆく上で、海洋を知り、どのように保全し、利用するかは重要な問題であり、わが国の責務でもある。一方で、これらの点は機会あるごとに指摘されてきたにも拘わらず、取り組みは思ったようには実を挙げてこなかった。むしろ東アジア地区の近隣諸国に取り組みで遅れを取るような状況も生まれている。今後必要な取り組みについて、国の総合的な海洋政策、海洋技術フォーラムの取り組み、技術、産業などの観点から考察を加える。
15:15〜15:45 コーヒーブレーク
午後の部 2 司会 日本海洋工学会運営委員 山崎 哲生(資源・素材学会)
(6)15:45〜16:30
海洋空間活用と海洋構造物のこれからの挑戦
渡邊 英一 京都大学名誉教授、財団法人大阪地域研究所理事長
海洋の有する空間・資源・エネルギーの活用と海洋構造物の活用、環境保全、維持管理などの展開について述べる。具体的内容としては海洋資源・エネルギー活用技術、地球温暖化防止のためのCO2海底隔離等の最近の話題を含め、米国、ノルウエー、日本等における海洋構造物展開、大阪市の浮体水平旋回アーチ橋の夢舞大橋、日本鋼構造協会によるClean Floatと称する海上浮体構造、NASAによる宇宙太陽光発電のための海上中継基地、自然リーフを活用したVLFS、最近のシンガポールにおける種々の浮体構造、地下水を利用した浮体免震構造その他の諸構想ならびに鉄鋼連盟を中心とした、海洋における構築物の腐食、・劣化維持・管理・防食・耐久性の研究の発展状況につき簡潔に紹介する。
(7)16:30〜17:15
地球深部探査船「ちきゅう」と海洋地球科学の展望
平 朝彦 海洋研究開発機構地球深部探査センター長
*岡田 裕 同センター長補佐(*講演者)
地球深部探査船「ちきゅう」は、約5年半の建造期間を経て2005年7月に完成し既に実施されたシステム統合試験及び現在実施中の海外における統合試験運用の後、2007年9月から本格的な科学掘削に従事することとなっている。「ちきゅう」は世界屈指の科学掘削船であるが、その運用による海洋地球科学の飛躍的な発展によって、海底巨大地震の発生や地球規模の環境変動のメカニズムが解明され、現在我々が直面している防災や温暖化等地球環境の変化といった問題の解決に向けた革新的な貢献が期待されている。
17:15〜17:55 午後の部 討論−2
17:55〜18:00 閉会挨拶 日本海洋工学会副会長 木下 健(日本船舶海洋工学会)
18:00〜19:30 懇親会
司会 海洋工学会運営委員 大山 巧(土木学会)
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