2024/06/19

2024年度日本水産工学会春季シンポジウム概要報告

 

 5月26日に東京海洋大学品川キャンパス白鷹館大講義室において,日本水産工学会春季シンポジウム「漁業における海洋プラスチックごみ問題:対策の現状と今後の展望」が開催されました。対面で会場内に59名の参加,またオンラインでも55名の参加がありました。
 木村暢夫会長(北海道大学名誉教授)の開会挨拶に続き,コンビーナーの東海正氏(東京海洋大学名誉教授)から趣旨説明と前回の秋季シンポジウム「海洋プラスチック問題と漁業における対策」の振り返りがあり,6人の講演者が登壇しました。
 前半は内田圭一氏(東京海洋大学教授)の座長のもと,最初の講演者 長谷代子氏(環境省海洋プラスチック汚染対策室)からは,国際条約の政府間会合での状況を含めて「海洋等におけるプラスチック汚染問題の国内外の状況及び漁業に関連する環境省事業」について報告がありました。その後,漁業者による海洋ごみの回収に関連した研究について,東海氏から「海底プラスチックごみの漁業による実態把握と回収効率の推定に関する研究」と松下吉樹氏(長崎大)から「海底プラスチックごみの回収支援に向けた手法・技術の開発研究」が紹介されました。
 後半は座長を東海氏に代わり,津山桂子氏(水産庁漁場資源課海洋保全班)から「漁業における海洋プラスチックごみ問題をめぐる状況と対策」として,特に漁具を巡る問題と対策,取り組みを含めて報告されました。その後に具体的な取り組みとして,木下康太郎氏(木下製網)から「まき網から始まる漁網のリサイクル ― Re:ismの取り組み」と題して,国内外の漁網リサイクルの現状とともに国内での漁具メーカーのみならず広く様々な企業や団体が参画した取り組みが紹介されました。 さらに,長谷川拓也氏(北海道漁業協同組合連合会)から,「北海道における漁網リサイクルの取り組み ― 現状と課題」と題して,先進的な取り組みと明らかとなった今後の課題が報告されました。
 総合討論では,藤森康澄氏(北海道大学教授)の司会のもと,講演者と対面での参加者を含めて,漁業者による海洋ごみ回収や漁具のリサイクルを進めるためにはこれから何が必要で,どういったことを取り組むべきか,オンライン参加者から寄せられた質問も取り上げながら,活発な意見交換が行われました。リサイクルを容易にするための分別に関する技術開発,また漁業者による理解と積極的な取り組みだけでなく,こうした海洋プラごみに対する取り組みをブランディング化して市民や消費者に認めてもらうことなど,次につながる意見が出されました。
 最後に,綿貫啓企画担当理事(アルファ水工)から,海洋プラスチックごみ問題の重要性を再認識するとともに今後も日本水産工学会として取り上げていくテーマである旨が述べられ,閉会となりました。

 

2024年度日本水産工学会春季シンポジウム コンビーナー

東海 正(東京海洋大学)
松下 吉樹(長崎大学)
藤森 康澄(北海道大学)
塩出 大輔(東京海洋大学)

 



上段左より長谷代子氏(環境省),東海正氏(海洋大),松下吉樹氏(長崎大)
中段左より津山桂子氏(水産庁),木下康太郎氏(木下製網),長谷川拓也氏(北海道漁連)
下段左より藤森康澄氏(北大),総合討論の様子

 

 

カテゴリ:日本水産工学会の行事