2012/08/20

科研費の細目表キーワードに「水産工学」が加わりました


 

 平成24年3月23日に,科学技術・学術審議会学術分科会科学研究費補助金審査部会から,科学研究費助成事業の「系・分野・分科・細目表」の改正についてが,公表されました.本学会の名称の一部にあたる「水産工学」が,この改正された細目表のキーワードに新たに加わりました.
 科学研究費助成事業は,人文・社会科学から自然科学まで全ての分野にわたり,基礎から応用までのあらゆる学術研究(研究者の自由な発想に基づく研究)を対象とした競争的資金とされています.この科研費の審査体制は,細目を基礎として設けられており,公正かつ効率的な審査を実施する上でも,分科細目表は重要な役割を担っています.実際に,研究者は,「基盤研究」,「挑戦的萌芽研究」,「若手研究」に応募する場合,「系・分野・分科・細目表」(以下「分科細目表」)から審査を希望する適切な細目を一つ選択し,その細目内で最も関連が深いと思われるキーワードを一つ選択することになります.平成25年度公募から適用する分科細目表については,10年に一度の大幅な改正が行われ,現在の学問動向に照らして応募しやすいものとなるように,分科・細目の名称や各細目の内容を示すキーワードが見直されるとともに,分科・細目の新設および統廃合が行われました.
 この改正で水産工学に関わるところでは,従来は分科「水産学」の中に二つの細目名「水産学一般」と「水産化学」が設けられていたのに対して,新たな分科・細目表では分科「水圏応用科学」の中に二つの細目「水圏生産科学」と「水圏生命科学」が設けられ,さらに「水圏生産科学」がAとBの二つ分割されています(表1).これに応じて,水圏生産科学AとBおよび水圏生命科学には,それぞれ17個と15個および28個のキーワードが示され,従前の「水産学一般」の15個と「水産化学」の12個から大幅に増加しています(表1).特に,(28)水産工学が水圏生産科学Bのキーワードのひとつとなりました.このほか,水産工学会が関係するキーワードとしては,従前からの(21)資源・資源管理,(22)漁業,(23)増養殖に,新たに(20)バイオロギング,(29)漁村社会・水産政策,(32)水産開発が加わっています.
 このほかに大きな変更点としては,「人文社会系」,「理工系」,「生物系」のうち,二つ以上の系にまたがる応募対象として,「総合系」が新たに設けられました.この「総合系」は,「情報学」,「環境学」,「複合領域」の3つの分野で構成されています.特に,この「情報学」と「環境学」はそれまでの「分科」であったものから,「分野」に格上げされたものです.この分野「環境学」の中にも,分科として「環境保全学」や「環境創成学」などが,またその下の細目には「環境影響評価」や「環境モデリング・保全修復技術」,「自然共生システム」,「持続可能システム」,「環境政策・環境社会システム」などがあり,特に「環境創成学」にある生態工学,環境と社会活動,合意形成,公共システム管理,持続可能発展などのキーワードは,本会に関連深いものと思われます.
 上述したように,審査はキーワード群による細目ごと,例えば「水産工学」をキーワードに選ぶと,それを含む細目「水圏生産科学B」の中で審査されることになります.また,この細目やキーワードは,5年あるいは10年に一度,見直しされてきていることから,今回の改正で加わったキーワードについても,そのキーワードを用いた申請の件数があまりに少ないと改廃の対象となるかもしれません.多くの会員諸氏が,新たな科研費の分科細目表の中で,ご自分の研究テーマにあった細目をみつけて,科研費の獲得に向けて申請をご準備いただければと思います.
 

(広報理事 東海 正)

 

表1 科研費において改正された水産関連の分科細目名とキーワードの変更

 

従来の分科細目

分野

分科

細目名

キーワード(記号)

水産学一般 (A)分類,(B)発生,(C)形態,(D)生理,(E)生態・行動,(F)漁業,(G)資源・資源管理,(H)増養殖,(J)遺伝・育種,(K)魚病,(L)水圏環境・保全,(M)海藻,(N)プランクトン,(P)微生物,(Q)有害藻類
水産化学 (A)生化学,(B)代謝・酵素,(C)水族栄養,(D)分子生物学,(E)生物工学,(F)生体高分子,(G)天然物化学,(H)分析化学,(J)食品化学,(K)食品加工・貯蔵,(L)食品衛生,(M)食品微生物

 

 

 

 

新たな分科細目

分野

分科

細目名

分別

キーワード(記号)

水圏

生産

科学

A

(1)水圏環境,(2)生物環境,(3)環境保全,(4)水質・底質,(5)海洋・物質循環,(6)藻場・干潟,(7)修復・再生,(8)環境微生物,(9)プランクトン,(10)ネクトン,(11)ベントス,(12)赤潮,(13)環境毒性,(14)水圏生態システム,(15)温暖化,(16)生物多様性,(17)リモートセンシング

B

(18)分類・形態,(19)生態・行動,(20)バイオロギング,(21)資源・資源管理,(22)漁業,(23)増養殖,(24)水産動物,(25)水産植物,(26)遺伝・育種,(27)魚病・水族病理,(28)水産工学,(29)漁村社会・水産政策,(30)水産経済・経営・流通,(31)水産教育,(32)水産開発

水圏

生命

科学

(1)発生,(2)生理,(3)免疫・生体防御,(4)代謝・酵素,(5)水族栄養,(6)生化学,(7)分子生物学,(8)マリンゲノム,(9)遺伝子資源,(10)生物工学,(11)微生物機能,(12)糖鎖生物学,(13)ケミカルバイオロジー,(14)バイオミメティクス,(15)生物活性物質,(16)天然物化学,(17)生体高分子,(18)分析化学,(19)水産食品化学,(20)機能性食品,(21)水産食品加工・貯蔵,(22)食品微生物,(23)食品衛生,(24)自然毒,(25)食品安全性,(26)ゼロエミッション,(27)水圏バイオマス利用,(28)バイオエネルギー

 

 より詳しくは,以下をご覧ください.

 より詳しくは,以下をご覧ください.

文部科学省
科学研究費助成事業―科研費―「系・分野・分科・細目表」の改正についてhttp://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu4/toushin/1320054.htm

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