2019/12/02

International Conference on Fisheries Engineering 2019(水産工学国際会議2019)開催報告

水産工学国際会議実行委員会委員長 松下吉樹
(日本水産工学会理事,長崎大学教授)

 漁場環境の保全,漁場や藻場の造成,漁港建設,漁船工学や漁業生産技術,資源探査技術など,水産業に関わる工学技術の現状をレビューし,将来の方向性について議論するための国際会議,International Conference on Fisheries Engineering 2019(水産工学国際会議)が,日本水産工学会が主催で2019年9月21日から24日にわたり,長崎市で開催されました。
 会場となった長崎大学文教キャンパスの文教スカイホールには,人数が多い順に日本,韓国,タイ,台湾,英国,マレーシア,中国,米国,ブラジル,フランス,ケニアの11の国と地域から144人の科学者,技術者および学生が参加,3つの基調講演,46の口頭発表,27のポスター発表,9のシンポジウム講演が行われ,会議の公用語である英語で活発な議論が行われました。
 9月21日は13時から全体会議が始まり,日本水産工学会副学会長の北海道大学,木村暢夫教授による基調講演「Fisheries Engineering, Today and Tomorrow, for Robust Fisheries」が行われました。この講演では,近年の水産工学研究各分野の主要な成果を振り返り,これからの水産業のあり方,進み方に対応した水産工学研究の方向性について語られました。そしてこの後は「ROOM1:水産土木工学」と「ROOM2:漁船漁業工学・資源探査技術」の2つの会場に分かれて会議が進められました。
ROOM1ではブラジル北リオデジャネイロ大学教授のIlana R. Zalmon博士による基調講演「Past, Present and Near Future on Artificial Reef Research」が,ROOM2では韓国全南大学校教授のKyounghooon Lee博士による基調講演「Biomass Estimation of Krill in the Antarctic Sea using Hydro-acoustics」が行われ,一般の口頭発表が引き続き行われました。そして夕方からは軽食と飲み物が提供され,夜までポスターセッションが行われました。このポスター発表会場では協賛企業による展示も行われ,参加者は展示ブースに立ち寄り,情報交換を楽しみました。
 2日目は台風17号接近のため,昼休みや休憩時間を短縮して2会場での口頭発表セッションを進行しました。
 3日目の国際シンポジウムでは長崎大学名誉教授の中田英昭博士が基調講演に続いて,海洋再生可能エネルギー施設の計画方法(英国Jan Matthiesen氏),施設周辺の環境調査方法(台湾Hsin-Ming Yeh博士,日本 北澤大輔博士,中村乙水博士,英国Benjamin Williamson博士),漁業者との調整(米国Michael Pol博士,日本 桐原慎二博士)について話題が提供されました。そして海洋再生可能エネルギーを水産業に活用する試みとして,水産工学研究所の三好潤博士より「Hydrogen Fuel Cell-Powered Fishing Vessel: Utilization of MRE for Fisheries」という話題が提供されました。夜には参加者はバスで稲佐山中腹のホテルに移動,バンケットが行われました。バンケットでは最初に田上富久長崎市長より歓迎の挨拶をいただき,日本酒の鏡開き,乾杯の後,長崎大学学生による龍踊の演舞,学生優秀賞(口頭発表はマレーシアのYi Jun Lingさん,ポスター発表は日本のMao Kurodaさん)の表彰などが行われ,参加者の皆さんは長崎料理と台風一過の美しい長崎の夜景も楽しまれました。そして4日目には長崎市のUNESCO世界文化遺産へのエクスカーションが行われました。
 今回の水産工学国際会議は世界中の水産工学の知見を見渡すためのネットワークを構築する第一歩として機能したのではと考えています。


Room 1の様子


Room 2の様子


国際シンポジウム講演者の集合写真


バンケットでの集合写真

カテゴリ:日本水産工学会の行事