2022/12/05
10月21日に2022年度日本水産工学会秋季シンポジウム「水中ドローン(廉価版,有線)を用いた海の可視化」がグリーンホール(エッサム本社ビル,東京都神田)で開催されました。空中ドローンの後を追うように,有線の水中ドローンは低価格で数多く販売されるようになってきました。有線なので水中行動やその範囲は制限されるのか,また,撮影された画像の解像度は十分なのか,さらに,水中で物を持つ,切る,サンプリングする等の作業は,どこまで可能なのか?等,知りたいところです。このため,実際に水中ドローンを用いて作業を行う各方面の方々にご講演いただきました。会場参加はコロナ感染対策のため密を避け約40人に制限しWEB参加は約80人あり合計で約120人でした。
まず,藤川氏(ライター)からは,「ビジネス活用が期待される水中ドローンとは」と題して,水中ドローン(廉価版・有線)の特徴,ニーズ,水中ドローンを活用することの価値,および活用する際の課題について,豊富な現地取材に基づいた幅広い情報を提供いただきました。続いて,小林(康)氏(日本水中ドローン協会)からは,「水中ドローンの啓発活動と資格認定制度について」と題して,トラブルを未然に防ぎ,産業を健全に発展させるため,日本水中ドローン協会設立と資格認定制度について説明がありました。その後は,事例紹介が行われました。平松氏(アテナ工央)からは,「活用事例: 水中ドローンによる海釣り公園の海底可視化」と題して,少しでも水中ゴミを減らすためには,釣り人一人一人の環境に対する意識改善が必要であり,このためには,水中ドローン等を用いて,浜辺や釣り場を可視化することの重要性が示されました。多賀氏(水産研究・教育機構)からは,「活用事例: 人工魚礁への水中ドローンによる定量評価手法の適用事例」と題して,水中ドローンによる撮影動画を解析することにより,魚礁周辺に偏在する魚種別の分布特性を定量的に明らかできことが示されました。石田氏(国際航業)からは,「活用事例: 水中ドローンの利活用方法と藻場を撮影して解析する事例」と題して,水中ドローンを用いた藻場の撮影動画を利用して,AIにより藻場判別を行った結果,人間の目と同程度に各海藻の被度が判別できることが示されました。小林(努)氏(東京久栄)からは,「活用事例: 水中ドローンによる養殖施設のオペレーション&メンテナンス(O&M)」と題して,水中ドローンによる養殖施設の日常のオペレーション,定期的なメンテナンス,養殖野帳や環境データ等を一元管理することによる養殖業の効率化や省力化について示されました。渡辺氏(水産庁漁港漁場整備部)からは,「活用事例: 漁港施設水中部の点検効率化に向けた水中ドローンの活用方法と適用性について」と題して,「光学機器を活用した水産基盤施設の点検の手引き」(水産庁)の中から,水中ドローンの活用方法として,対象とする施設の変状,点検の流れ等について説明がありました。
最後に総合討論では,特に,水中ドローンの位置把握に関する技術開発について話題が集まり,水深が浅い場所での位置把握の可能性,装置の価格等について等,問題意識の共有が行われました。本シンポジウムで講演いただいた内容は学会誌に掲載予定ですのでご覧ください。なお,本シンポジウムの開催運営につきましては,桑原氏(東京久栄),大井氏(水産研究・教育機構)のコンビナーにご協力を頂きました。
綿貫 啓(企画担当理事)
シンポジウム対面会場の様子
登壇者の顔ぶれ(登壇順)
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